ヒビが入り抜歯させてもおかしくない歯を可能な限り残すための根の治療

投稿日:2017年9月24日

カテゴリ:根管治療

左上の痛みで来院された患者さん

以前にもブログでご紹介した患者さんです。左上の痛みで来院されました。

左上のレントゲン写真です。写真の右から2番目の歯が原因でした。患者さん自身もこの歯とわかっていました。根の治療の必要性を説明後、治療をスタートしました。

かぶせ物、土台を取り外すと・・・

歯の内部にヒビが入っていました。この時点で、抜歯の選択もありなので、患者さんに状況を説明したところ、「可能な限り残したい」という結論に至ったため、根の治療を続けました。

壁のない部分に人口の壁を作り、ラバーダムをしたあと、もともと根の内部に入っていた薬を取り除きます。

薬を取り除いたあとの根の内部の状態です。

マイクロスコープを使ってよく観察すると・・・

赤い矢印の部分に、なにやら、窪みがありました。この部分に、ニッケルチタンファイルを挿入すると・・・

スルスルと内部に入っていきます。

新たな根の管の入り口発見です。この管は良くあるので、治療中のケアが必要なのですが、多くの場合見逃されています。マイクロスコープを使いこなせなければ、見つけるのは困難だからです。はっきり断定はできませんが、痛みの原因はこの内部にあった汚れが原因の可能性もあります。

超音波で入り口を丁寧に広げ、根の管をニッケルチタンファイルで大きくします。

これが、最終的な状態です。

この処置の一連の流れを動画でまとめましたので、ご覧ください。

 

まとめ

根の管を見逃すことは、歯の内部に根本的な原因である「汚れ」を残してしまうことです。つまり、失敗につながります。この汚れを、いかに取り除くかが、根の治療の成功への鍵であり、この過程をマイクロスコープを使いこなすことにより、その治療の成功率が格段に向上します。

今回の症例は、ヒビが入っていて、他の専門Dr.であれば「抜歯」と診断されてもおかしくない歯です。その診断の正当性も理解できますが、やはり自分が患者さんと同じ立場なら、抜きたくないです。保存できる可能性があるのであれば、できるだけ残す治療をしたいですね。

次回で、この歯の根の治療は終了予定です。緊密に根の内部に薬をつめ、そしてヒビがこれ以上進まないよう、土台で補強し、かぶせ物をしてさらに補強する予定です。

残念ながら、抜歯と診断せざるを得ない症例もあります。しかし、このように健康な状態で保存し、抜歯しないで済む可能性のある歯は、できる限り残したいものですね。

柳沢歯科医院